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4,5日前にフランスから届きました
(紀伊国屋に行けばあると思いますが、また電車にのるとか
夫と交渉するのが面倒。紀伊国屋オンラインにはなかった)
そのまえに、訳のでている
「シンプルな情熱」
アマゾンだったかで注文
うすい!
しかも文字も大きく、解説がたくさん・・・
とまどっているうちに
Amazon から L'évenement が届いて
そちらを先に読みました
これもなかなか薄いです 笑
トップの写真ですが、本をぐちゃぐちゃにして
読む悪い癖があるので、表紙がそっていて・・・
大きめの活字で130ぺージ(目には優しい 笑)
大作を書かなくてもノーベル賞はもらえるんだ
(ボブ・ディランの例もありますが)
ま、とにかく読んでみることに
現在の描写、当時の出来事が
短い考察と共に、混在して語られています
でも、昔のヌーヴォーロマンのように
読みづらいとか、そういうことはありません
( )がついていたりする
まず初めは、クリニックで検査の結果を
待っている。みな沈黙、エイズの検査なのです・・・
それから学生時代、1963年のこと
主人公は Rouen で大学生活を送っている
そこで妊娠が発覚
あとはなんとか中絶を考えます
当時、中絶は違法、手を貸した医者も罰せられる
そういう世の中
Si l'avortement est interdit et criminalisé au
moins depuis l'édit de 1556, l'interdiction applicable en 1975 est issue de
l'article 317 du code pénal. Il punit de peine de prison et d'amende le
fait de subir, de pratiquer ou d'aider un avortement.
太字のところを訳しますと
この法律は、妊娠中絶(l'avortement) を受ける、行う、あるいは援助したばあい、投獄および罰金で罰せられる
大変厳しいものです(1975年)
これに対して、女性知識人たちがデモを行い、
法の改正を要求、ボーヴォワール(サルトルの伴侶)など
自身も中絶の経験があるという多くの女性が参加
そして当時厚生大臣であった、シモーヌ・ヴェイユ氏が(あるいはヴェイルとも)中絶法を議会に承認させました
La loi
du 17 janvier 1975 relative à l'interruption volontaire de grossesse,
dite loi Veil, est une loi encadrant une dépénalisation de l'avortement en France. Elle a été préparée par Simone Veil, ministre de la Santé sous la présidence de Valéry
Giscard d'Estaing.
La loi est promulguée
le 17 janvier 1975, pour 5 ans à titre expérimental. Elle est reconduite
sans limite de temps par une loi du 31 décembre 1979.
1975年、1月17日の自己の意思による妊娠の中絶を認める法律、ヴェイユ法と呼ばれる
これはフランスにおいて、妊娠中絶(堕胎)を処罰の対象から外す法律である。
この法律は、シモーヌ・ヴェイユ、健康省によって準備され、ジスカール・デスタン大統領のもとで行われた。
この法律は1975年、1月17日に広布され、5年間は実験期間とされた。
この法が期限なしで認められたのは1979年12月31日の法による
繰り返しますが、これは Loi Veil と言われ
妊娠中絶は
IVG interruption volontaire de grosesse
と呼ばれます
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前置きが長いですが、このような状況、そのさらに
10年以上も前のことです
エルノーさんの小説はすべて自伝的とされ
自身の経験に基づいていると考えて良いでしょう
で、本編に戻りますと、とにかく
半分くらいあとからは、どうやったら中絶できるか
そしてその模様・・・凄いです!
内容は書きませんが、とにかくまずは
普通の産婦人科に相談しますが、もちろん
何かしてくれるわけではない(医者も罰せられます、免許はく奪)
それで闇で堕胎をしている女性を紹介され・・・
その辺から一気に夕べ読みました
いろいろな社会階層の問題も語られます
彼女(主人公)はRouen の大学に通っていて
しかし、実家はちいさな雑貨店を営む
milieu modeste 庶民階級(階層)の出身
でも、大学生、ということで最後は医者にも
一目置かれる、という男女、階層の問題にも
触れられています
(庶民階級から、学問―彼女はagrégation-上級教員資格を持っています
インテリとして上の階級に上った)
終わりのほうに(フランス語はあえて、というか遠慮して引用しませんが)
こんな文章があります
私の人生の目的は多分これだろう
わたしの体、感情、思考がエクリチュールの
一部となるということ
つまり、何か知覚によって理解されるもの、そして
一般的なものとなり、わたしの存在が完全に
他者の頭脳や生活の中に溶解していく、ということだ
その前にも
これが自分の体を通して、生と死
時間、道徳と禁忌、法、などについての
完全な経験を言葉にした・・・
と覚悟を語っています(ざっと訳したものです)

これは現在訳がでている唯一の本
これも、本当にうすっぺらくて
100ぺージくらい、のこり60ページが解説
まだ読んでいません

この本、L'évenement は「事件」
11月に訳がでるようです
他の作品と一緒になっているので
やはりそちらも短いものなのでしょう
==============
ところで、日本では妊娠中絶はお金は必要ですが
比較的簡単にできるようです
母性の保護、という理由があれば、ちゃんとした
お医者で出来る(事の良しあしは別として)
しかし、わたしが80年代にフランスに住んでいたときには
まだ、スイスでavorter する、とかいう話を
耳にしたこともあります
そんなに厳しい国なので、闇で行わざるを得ず
そのため命を落とした女性もすくなくないと言います
現在は、事後のピル
la pillule du lendemain
が解禁されるまでになりました
日本では、承認はされたものの、手にいれるのは
難しいとか言われているようですね
読む前は、「第二の性」を著した
Simone de Beauvoir シモーヌ・ド・ボーヴォワール
にノーベル賞をあげてくれ、と思いましたが
(当時はカミュ 受賞、 サルトル 拒否 など
きら星のごとく文学者がいましたが)
まあ、ボーヴォワールさんが、死後35年後くらいに
受賞した、と思ってもよいか(1986年死去)
と思ったり
とにかく、凄い内容です
=================
追記 日本語訳のほう、「シンプルな情熱」も読みました。
年下の男性との情熱を描いており、(相手は妻帯者)
この作品も、「事件」と同様、出来事と、それについての考察
ー 当時の、また現在の、を描いています。
また、この本のあとがきによりますと、他に訳が2,3
早川書房から出されたようですが、検索しても、「事件」を
含んだものしかでてきません。10月26日発売、となっています
ので、すでに刊行されたと思われます。
興味のある方はぜひ
一読の価値はあると思います
また、アメリカではトランプ政権が任命した判事により
最高裁で、中絶が違憲となり、いくつかの州で、法律が
厳しくなったと、ニュースが伝えています(特に
テキサス州)未だ今日的な問題であると
思わざるをえません

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